Hørve Journal

With

Richard Manz

Richard Manz
リカード・マンツ
陶芸家。1933年ドイツ・エッセンリンゲン生まれ。妻で陶芸家のボディル・マンツと共に自身の工房を設立。デザイナー、セシリエ・マンツの実父にあたる。

People

素材とフォルムに精通したデンマークの陶芸家リカード・マンツ(1933-1999)は、日用品から彫刻作品に至るまで、幾何学やバランス、そして使い心地への繊細なまなざしを持って、造形を探り続けました。彼の作品からは、まるで研究者のように丁寧に実験を重ねる思考と、課題に向き合ったときの柔軟さの両面がにじみ出ています。デザインにはすべて理由がある——そう信じていた彼は、細やかな検証と観察を重ね、ひとつひとつのかたちにたどり着いていきました。静かに磨き上げられたフォルムには、美と機能が共鳴するという彼の揺るぎない美意識が映し出されています。

ドイツに生まれたリカード・マンツは、14歳という若さで陶芸の道を歩み始め、窯用タイルの制作にも携わっていました。その後スウェーデンへと移り、グスタフスベリでの仕事を通じて、工房での陶芸や少量生産の可能性に触れます。この時期がきっかけで、フォルムと機能の関係を生涯かけて探る旅のはじまりとなり、手仕事ならではの温かさと、技術的な精密さとを併せ持つ彼独自の作品群へとつながっていきます。

Places

“Location, location, location.”
ホルヴェにある工房の風景。コペンハーゲンから西へおよそ100km。周辺には歴史的な教会や城、自然豊かな風景が広がっている。

1970年代、リカード・マンツは、同じく陶芸家であり、妻のボディル・マンツと当時まだ幼かったふたりの子どもたちとともに来日しました。一家は日本の磁器づくりの中心地、有田に滞在し、現地の工房で制作に携わりながら、何百年も受け継がれてきた技術に触れ、自らの北欧的な視点と重ね合わせていきました。2025年発表の1616 / MANZ “Contour” は、そんな有田での経験にあらためて立ち返るものであり、リカード・マンツのデザイン哲学を築き上げた場所への、静かな回帰ともいえるものなのです。

日本から帰国後、夫妻はデンマークのシェラン半島(Sjælland)北部にあるホルヴェ(Hørve)という街の自らの工房で制作を続けました。リカード・マンツはそこで、細部まで丁寧に見つめる技術的な感覚と、作家としての誠実さとのあいだで、表現のバランスを磨いていきます。彼の持つインダストリアル分野の知識と手仕事への理解は、工房での実践を通じて新たな意味を持ち、機能や形態、スケールの探究へとつながっていきました。その姿勢は、晩年にいたるまで彼の仕事の軸であり続けました。

One day at Hørve…

‘My form world consists of simple basic forms. These are the point of departure for all my ceramic items in porcelain and stoneware, whether they are thrown, shaped or moulded into utility objects, decorations or unique items, and irrespective of which ceramic technique I make use of’. (Richard Manz)

Photography by Elizabeth Heltoft